成城アルプスのフルーツケーキ。

成城アルプスのフルーツケーキ。


夫が会社帰りに、友人とコーヒーショップで待ち合わせをした。
PCが調子が悪いので見て欲しい、というSOSが入ったのだ。
彼は今、大学院に在学していて、PCが動かないとリポートの提出に間に合わないという。
PCのトラブルは、小一時間ほどで解決したらしい。

「いやあ、ほんとうに助かった。ありがとうございました」
と、彼は丁寧に礼を言った。
「とりあえずの応急処置だけど、これで当分はダイジョウブだと思う」
夫は冷たくなったコーヒーを飲み干した。
「で、お礼といってはなんだけど」と、彼は本でパンパンに膨れたバッグの中から、白い手提げ袋を取り出して夫に渡した。「アルプスのフルーツケーキ。マイローくんと食べてください」
彼は我が家の愛犬マイローをこよなく愛しているのだけれど、この場合、犬がケーキを食べるわけではないので、奥サマのわたしと夫に、ということだろう。
「もう、こんなことしなくていいのに」
「でも忙しいところをお願いしたんだし」
どこまでも礼儀正しい彼である。夫はすこし怒った顔をしてみせた。
「おい、山根、キミはボクの親友だろ。だからこうして来たんじゃないか。こんなことしたら、もうPCも見てやらないからな」
「えーっ、そんなこと言わないでよ。困るよ」
彼は一瞬、本気で慌てた。
「冗談だよ。でもほんとにこんな気を使わなくていいんだからね」
「わかった」と彼は頷いた。「で、これはもらってくれるの?」
「ううむ、せっかくだからいただいていこう。きっとマイローが尻尾を振って喜ぶよ」
ははは、そうだね、と二人は声を立てて笑った。

「というわけなんだ」と、帰宅した夫は、熱心にケーキの外箱のリボンをほどいているわたしに言った。
「ふうん、そうなの」
わたしは返事も生半可に、ロイヤルブルーの箱を注意深く開けた。
「まあ、なんてきれいなケーキ!宝石箱みたいよ。今夜はもう遅いから、明日お紅茶をいれていただきましょうね」
「おお、美味しそうだ。山根によろしくメールしておいてね。またごはん食べに来てってね」
了解、といってケーキを箱に戻し、彼にメールを打った。


成城アルプスは、おおよそ40年前にオープンした。
成城が今よりずっと静かな住宅街だった頃だ。
わたしも何度か行ったことがあるが、2階のティールームはとても落ち着いた、優雅な雰囲気が漂っている。
正統派のケーキは、どれも丁寧に作られて、姿も味も折り目正しく端正な印象だ。
そう、成城で生まれ育った彼のように。


■成城アルプス
東京都世田谷区成城6−8−1 / tel; 03-3482-2807 / 火曜定休


おまけ。以前にご紹介した「成城アルプス」のケーキ画像から;

アルプスのモカロール

完璧なぐるぐる渦巻きが特徴の「モカロール」は人気商品。
中のクリームは、モカ味のバタークリーム。とても美味しい♪

アルプスの季節限定スイートポテト

季節限定のスイートポテト。底に洋梨が隠れている。
このほか、定番のシュークリームが有名です。
フルーツケーキもしっとりとして、やわらかいラム酒の香り、いちじくのぷちぷちした食感、オレンジやレモンの爽やかな風味が美味しかったです。


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