天ぷらの時間。

にんじん・ごぼう・いんげんの天ぷら


久しぶりに、母(姑)が泊まりにきました。
あまり特別なおもてなしでは、母もかえって気を使うので、わたしはいつも「普通プラス気持ち」程度にしています。
今夜のお献立も、とりたてて特別なごちそうは作りませんでした。
ごちそうをたくさん作るよりは、わたしもいっしょに飲んだり食べたりして、共におしゃべりする方が母も喜びます。
今夜も世間話から家族のこと、趣味のことなど、とりとめのない話をたくさんして、楽しいひとときを過ごしました。

夫の両親は中越で暮らしています。
中越の人々は新潟県中越地震で被災し、この冬の豪雪にもやられ、ご苦労の多い日々が続いています。
両親は中越地震で、家屋一部損壊の被害を受けましたが、今はもう修理も終わり、また長く続いた余震もほとんどなくなって、わたしたちも安心していました。
先日、母がバスに乗っていたときのこと。
突然車体が、どすんと大きく揺れました。
うとうと居眠りをしていた母は飛び起きて、とっさに
「きゃっ、地震だ!逃げなくちゃ」
と、大声で叫びました。
バスの揺れは、地震ではなくて、震災ででこぼこになった道路のせいでした。(震災の復興はだいぶ進みましたが、中心部から離れた道路は、補修中や未補修のところもまだけっこうあるらしい。)
周りの乗客はくすりと笑ったものの、「奥さん、だいじょうぶですテ」と優しく声をかけてくれたそうです。
母は、自分ではもう地震の恐怖から完全に立ち直ったつもりだったから、すこしショックだった、と言いました。

地震も豪雪も、目に見える被害のほかに、人々の気持ちに大きな影響を残しました。
両親の、ということではなく、そこに暮らす多くの人々が、家族の絆や日々の暮らしや生き方などを見直すことになりました。
実際、両親やわたしたち夫婦の周りにも、そんな話はあちこちに転がっています。
たとえば、地震や豪雪のときに、普段はそれぞれに暮らす家族が支え合って、より絆が深まったことがあったかもしれない。
あるいは逆に、都会に出て行った子供が意外に冷たくて、寂しい思いをした老親もあったかもしれない。
たとえば、地震や豪雪をきっかけに、それまでは自分の仕事だけに熱心だった人が、家庭に目を向けるようになったかもしれない。
あるいは、今まで家族のためと思って生きてきた人が、これからは自分のために楽しく生きようと、考えを変えたかもしれない。

地震と豪雪は、大きくておそろしい真っ暗闇の手となって、人々の心の奥底を無造作にひっかきまわしていきました。
その結果、あたたかくて嬉しいものが出てきたかもしれないし、同時に、ぞっとするほど嫌なものも出てきたかもしれない。
そういういろんなものを受け止めて、次へと歩き出すのは、厳しくて骨の折れることに違いありません。
でも、時間はかかっても、きっとできる‥。
「生きる」ということは、そういう強さと大きさを持つことだと思うのです。


姑は元気に帰っていきました。
小さくなる背中を見送りながら、この次は家族でお義母さんの天ぷらを食べたいな、と思いました。
お義父さんが山で摘んできた山菜を、お義母さんが揚げる。
香りも味も豊かで、どこで食べる天ぷらよりも美味しくて、家族みんなで賑やかにいただく時間が、わたしは大好きです。
姑の天ぷらも、実家の母の天ぷらも、愛しい大事なもの。
味だけなら天ぷら専門店にはかなわないけれど、おうちで食べる天ぷらはもっと美味しい。
それは家族の味がするから、かもしれません。


☆3月1日のお献立;
天ぷら(人参・牛蒡・隠元)、はっさくときゅうりの中華風サラダ、電子レンジ豆腐のお出汁がけ、小松菜とにゅうめんのお椀、白菜漬け・梅干・焼きたらこ、白米。



【はっさくときゅうりの中華風サラダ】の作り方;

1)糸寒天をお水で戻しておく。きゅうりは千切りにして塩もみし、さっと水洗いしてから絞る。はっさくは皮と房を剥く。
2)ボウルで米酢・はちみつ・薄口醤油・和からし・ごま油を混ぜ合わせ、1を加えてよく混ぜ合わせる。

糸寒天の代わりに、ワカメや水菜、茹でた春キャベツでもOK。
余裕があれば、2)で米酢のほか、はっさくの絞り汁を加えると、より爽やかで美味しいです。




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