キーシンと美酒に酔いしれる夜。

素晴らしかった!!ブラボー!
一夜明けても、興奮冷めやらず。
エフゲニー・キーシンのピアノ・リサイタル@ミューザ川崎に行ってきました。
キーシンは大好きなピアニストの一人です。
彼のコンサートにはなかなかご縁がなくて、今回初めて生の(!)キーシンを拝聴するので、それは楽しみにしていました。
ミューザ川崎シンフォニーホールは、2004年7月にオープンした新しいホール。
初めて行ったのですが、思っていたよりもずっといいホールでした。
客席がすり鉢状に舞台を取り囲む「ワインヤード型」、さらに通常のホールよりも舞台の高さが低くなっているようで、舞台がとても近くに感じられました。
音響も良く、専門的なことはともかく、伸びる音、消える音が非常にバランスがよかったです。

舞台に現れお辞儀をしたとき、キーシンはすこし緊張しているように見えました。
この夜が日本で最初の公演だったからかもしれません。
しかし、ひとたび彼の手が動き出すと、あっという間にホールはキーシンの世界に引き込まれました。
観客はキーシンの息遣いや鍵盤に触れる音まで吸い取ろうとするみたいに、息を潜め、身を乗り出していました。
一歩でも、一瞬でも、キーシンの魂に触れたい‥!
そんな心がホールに溢れ、興奮と緊張で、空気が熱く張り詰めていました。
キーシンの音はほんとうにすごかった。
強い音も弱い音も、旋律に乗って空気が震えるのです。
わたしの肺と心臓が人より弱いこともあるかもしれないけれど、音が深く身体に響きます。
激情と熱情、苦悩と復活、歓喜と謳歌、強靭と柔軟‥‥
ピアノを操るというよりも、キーシンの魂がピアノそのものとして現れているようでした。
ああ、なんて豊かで強くて繊細なの!
と集中して聴いていたら、ん?キーシンの唸り声が聞こえる!!
「むぅっ」トゥルトゥルぽろりん‥‥「うぅ」タラリラぽろりん‥‥
強い音のあとですうっと静かな音に入るときに、ほんの一瞬なのですが、たしかに聞こえるのです。
あのキーシンが、今たしかにわたしと同じ空気を吸っている!
不思議な感動でした。
プログラム前半のベートーヴェンも見事でしたが、やはり素晴らしかったのは後半のショパン。
観客はもうすっかり魅了されて拍手喝さい、立ち上がる人も大勢いました。
キーシンは一人一人の気持ちに応えるみたいに、ふわりふわりと巻き毛の頭を揺らして、ホール中にゆっくり何度もお辞儀をしました。
アンコールはなんと8曲。
たっぷり一時間も、観客の気持ちに応えてくれたのでした。
(わたしは6曲目で失礼したけれど。)
観客も大満足だったけれど、キーシンも嬉しそうでした。
35歳になったキーシン。
ある意味、体力も技巧もピークを迎えているのだろうと思います。
これから40代50代と年齢を重ねて、彼の精神と肉体も、次の季節に入るでしょう。
そのときどんなキーシン・ワールドが展開されていくのか、世界中のファンが見守っています。
天才の魂とエネルギーに触れて、わたしも生きる喜びを胸いっぱい感じました。
ありがとう、キーシン!

‥‥というようなことを、コンサート後、夫とバーで語り合ったのでした。
シングルモルト・ウイスキーの味わいに満ちた余韻は、ふたりの感動の影を深く長く、満月の夜に沈めていきました。
【エフゲニー・キーシン2006年4月12日日本公演の曲目】
◆ベートーヴェン:ソナタ第3番 ハ長調 /ソナタ第26番 変ホ長調「告別」
◆ショパン:スケルツォ全曲
(第1番 ロ短調 / 第2番 変ロ短調 / 第3番 嬰ハ短調 / 第4番 ホ長調)
◆アンコール:8曲
ショパン/エチュード嬰ハ短調、リスト/ハンガリー狂詩曲第10番ホ長調、ショパン/ワルツ第7番嬰ハ短調 など
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